自炊支援SS

眠(1/2) ◆7J..NEMUさん 作


「うー…」
小さい呻き声と共に、草原に映った影が動いた。
「やべ、俺寝てた…?」
青年は目を擦りながら身を起こし辺りを見回す。
「クエェ」
「お、ボコ。悪いな、寝ちまって」
彼は名をバッツといった。
勇者でも有名な戦士でもない、小さな村から出てきたしがない旅人。
相棒のチョコボの背に乗って世界を駆け回るその姿は小さくはあったが、
彼は自由な男だった。
気の赴くままに草原を、森を、砂浜を、少年のような心と共に。
「なあボコ、今から急げば夜には村に着けるかな」
「クエェッ」
「わ、解ってるよ!俺が寝なけりゃ急がなくても良かったんだけどさっ」
「クエ」
「ごめんな。もうちょっと休んだらひとっ走り頼むよ、ボコ」
チョコボのボコは彼の大切な相棒であり親友でもある。
言葉が通じなくてもバッツは不自由だと思った事など無く、それはボコも
同じようだった。
「次はどこへ行く?」
「クエー」
ボコが首を傾げたのを見て、自分も腕を組んで思案顔になる。

「俺はちょっと涼しい所がいいかな。この辺り、最近は暑いからさ」
「クエ、クエッ」
「うん?海?海か、それも良いなぁ」
「クエー」
「や、山?頂上は涼しいだろうけどな…うーん、俺高いトコ苦手だからなぁ」
目指す場所は無くても、世界は彼を退屈させはしない。
父の遺言にしたがい世界を気の赴くままに回っていく日々。
自分の知らないものを探して、ある時は風の吹く方角へ、ある時は休息を求めて。
「…まあ色々あるけどな。そうだ、落ち着いたらボコの嫁さんでも探すか」
「クエェ〜」
「はは、からかってるんじゃないんだぜ?」
驚いたような素振りを見せるボコをぽんと叩く。
「クエッ?」
「俺はまだいいって」
肩を竦めると立ち上がり、服に付いた草を祓うとバッツは深呼吸をした。
「………っし、行くか!」
「クエ!」
返事をして身を低くしたボコに飛び乗り、前を向く。
「じゃ、まずは海だな」
「クエェッ」
「ああ、お前に任せるよ。…出発だ!」
草原に映る影が走り出した。
まるで、風のように。

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