本スレ579さん作


俺が17歳になったある日。
朝起きて顔を洗いに川へ行った後暫くしても親父が起きてこなかった。
不思議に思った俺は親父の天幕に入って行った。
そこには・・・血を吐いて倒れている親父が居た・・・
「・・・親父?」
まさか?
俺は考えたくなくて・・・
認めたくなくて・・・
でも、それでも最近親父が顔色が悪く食欲が無くて・・・
そしてなにより・・・
俺に見つからないように隠れて血を吐いていた光景が頭に浮かんできて・・・
その場を逃げ出していた。

認めていないはずなのに自分は一人になったと孤独感襲ってきて。
俺はまだ親父の死を確認もしていないのに親父を死んだことにしていた。
母さんが3歳のころ死んで・・・
親父と旅に出て・・・ずっと続くと思っていた・・・
血を吐いている光景を見ても信じていたかった。
親父はずっと生きていてくれると。

暫く走って俺は川に転落した。
といってもそれほど深くも流れが急な訳でもない川だったから溺れはしなかったが、
ただ幸いというべきなのだろうか?
水で頭が冷えて少しは冷静に考えれるようになった。
自分が何も確認せずに走ってきただけで親父は死んだと決まった訳ではないと、
親父はまだ別に死んだと決まった訳ではない、
それどころかなんで血を吐いて倒れてるくらいで死んだと自分は決め付けていたんだ?
と、思うことにして俺は天幕に戻っていった。
ただ・・・冷静になるということは嫌な事で
自分が何故ああまで取り乱してしまったのか?
それは自分自身が本当はもう親父が長くないことを感じ取ってしまっていたからじゃないのだろうか?
とそんな事を天幕に戻る間考えていた。
ただそんな思考すら本当は自分を誤魔化そうとしていただけだったんだろう・・・
親父の顔は普段の・・・いや最近顔色の悪かった親父と比べてもあり得ないほど
血の気が生気が感じられなかったから。

親父は死んでいた。
「ごめんな・・・親父、逃げ出しちまって」
涙が止まらなかった。
大泣きするようにじゃなく・・・ただ涙が止まらなかった。
「俺もっと親父に色々教わりたかったんだぜ、それなのに・・・」
憎まれ口を叩いてみようと思っても涙は全く止まらなかった。

暫く・・・感情が落ち着くまで何故か泣き喚く事も出来ずにずっと俺は泣いていた。
止めようとは思わなかったが止めようと思っても絶対止められない気がした。

「とうとう一人になっちまった・・・」
そう言って俺は立ち上がった。
親父を外に運び出した。
死んだ親父の重さを感じて・・・予想よりずっと軽い体を背負ったとき、
こんなに軽くなってたんだと思った。
親父の周りに木の枝や葉っぱ等を重ねた。
「はやく母さんに会わせてあげなきゃな」
さすがに死体をリックスまで運ぶことは出来ないからせめて骨だけでも母さんと同じところにと思った。
紙くずに火をつけてそれを木に燃え移らせようとした時、体が動かないような気がした。
「さよなら親父」
その言葉とともに火は燃え移った。

翌日俺は親父の骨の一部を子袋に詰めて。
そして親父の剣を腰にさして旅の支度を整えた。
これから一人で生きていかなくてはいけないそのプレッシャーを腰の剣が和らげてくれるような気がした。
今から初めての一人旅だ。
最低でもリックスに親父の骨を埋めてくるまで死ねないなと思った。
こんな時に目的があるというのは本当にありがたい気がした。
一度後ろを振り返り一言声に出してから俺は歩き出した。
「まずはリックス」、と
風が俺の後ろを押してくれるかのように凪いでいた。

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